滋賀県議会9月定例会議 一般質問 質問&答弁③

滋賀県議会9月定例会議 一般質問

質問&答弁③


◉最低賃金や社会保険等の影響について

【質問 中沢】

 滋賀では、この10月5日から最低賃金が1080円となり、2026年10月頃には年収106万円の賃金要件は撤廃され、社会保険適用が拡大される予定です。その後、企業規模要件も段階的に縮小される予定です。

 物価高騰の中、最低賃金の上昇は非正規雇用が広がった労働者の生活保障や経済の底上げ、企業の人員確保につながることが期待されますが、依然として国際的には低水準であり、国際競争力や労働者保護の観点から改善が必要といわれています。また、年収106万円の壁の撤廃は働き控えの解消や、将来保障の強化につながると言われています。ただしデメリットもあり、社会保険料の本人負担分で手取りが減少したり、BtoBやBtoCにおける価格転嫁には、まだまだ課題があり、雇用調整や障害者や高齢者などの雇用機会の縮小につながることも危惧されます。企業にとっては、物価高騰の中で経営環境が厳しくなり、そのうえ収入が上がらないと人件費の増加が経営を圧迫することにつながることを危惧しています。最低賃金の上昇や社会保険適用拡大による、労働者への影響と滋賀の中小零細企業への影響をどのように捉えられているか商工観光労働部長に伺います。

【答弁 商工観光労働部長】

最低賃金や社会保険の適用拡大についての6点のご質問のうち、私への2点のご質問についてお答えをいたします。 1点目の労働者と中小企業への影響についてでありますが、物価の上昇が続く中、最低賃金が引上げられることは、 賃金全体の底上げにつながり、ひいては消費の拡大など、経済の好循環につながることが期待をされます。 また、社会保険の適用が拡大され、中小企業の短時間労働者などが厚生年金や健康保険に加入することで、年金の増額などのメリットを受けられるということがあろうかと思います。 一方で、事業者からの声としては、急速な最低賃金の引上げや社会保険料負担の増額は、企業利益の減少あるいは雇用の抑制につながるといったご意見も伺っているところでありまして、特に人件費比率が高い中小企業の経営への影響が懸念されるところでございます。

【質問 中沢】

 最低賃金の上昇だけでなく、滋賀における2025年の全体の賃上げ率は5%を上回り、300人未満の中小も4%後半となり、全体も含めて昨年実績を上回りましたが、99人以下の零細企業は、3.45%と昨年実績を下回っていると伺っております。格差が拡大しています。中小零細企業の努力も必要ですが、賃上げ原資を確保するための施策も必要だと感じています。国が先頭に立って施策を講じるべきですが、県としても、何らかの施策はあるはずですし、製造業の多い滋賀県が率先してできることに取り組んでいただきたいと思っています。一例として、生産性向上や新事業展開、人材育成の取組を後押しし、賃上げの原資となる付加価値額の増加を図ることを目的とした「滋賀県未来投資総合補助金」は大変人気ですぐに予算枠いっぱいになったと聞いています。企業の経営を支えるために県としてどのような対応をしようとされているのか、商工観光労働部長に伺います。

【答弁 商工観光労働部長】

2点目の県としてどのような対応をするかということでありますけれども、持続的な賃上げを実現していくためには、 厳しい環境にある中小企業において、コスト上昇分の適切な価格転嫁、それから生産性向上等による付加価値額の増加によって賃上げの原資が確保されることが重要であると考えて おります。このため、今年度におきましては、地方版の政労使会議であります滋賀県働き方改革推進協議会の決議事項を踏まえまして、9月の価格交渉促進月間に合わせて事業所訪問を行うほか、経済団体と連携した価格転嫁セミナーを開催するなどしているところでございます。また、ご質問でご紹介いただきました滋賀県未来投資総合補助金では、現在、1,700 件を超える事業者の生産性向上、新事業展開など未来を見据えた取組を支援しているところでございます。引き続き、これらの事業の効果を検証するとともに、県内事業者の皆様の声、あるいは国の経済対策の状況をしっかり把握をしながら、県として必要な対応を機動的に行ってまいりたいと考えております。

【質問 中沢】

 最低賃金の上昇と社会保険適用拡大は、福祉関係の事業所には大きな影響があると考えます。福祉関係は、報酬が国で決定されて裁量の余地が少なく、人件費が大半を占めるため、物価の高騰もあり経営が厳しくなっていることが容易に想像できます。特に、就労継続支援A 型に係る報酬・基準について≪論点等≫によれば、43.4%の事業所の売上が未達になっており、最低賃金以上の給料を払うことが義務付けられているA型事業所では約4割が赤字との報道もあります。そのA型事業所は、物価高騰の中、令和6年度の報酬改定により厳しい状況になった事業所も多くあると言われています。共同通信の調査では、2024年3月から7月に全国で329ヶ所のA型事業所が閉鎖され、約5000人が解雇・退職となった事が調査て判明し、公費に依存し収支が悪い事業所を対象に、国が報酬を引き下げたことが主な要因で、撤退が続いていると報道されています。そのうえ、最低賃金の上昇、2026年10月からの保険適用拡大が更に追い込むのではないかと危惧をしています。令和6年度以降の滋賀のA型事業所の廃業数と理由をどのように把握されてますでしょうか、健康医療福祉部長に伺います。

【答弁 健康医療福祉部長】

私に2点の御質問をいただきました。まず1点目の就労継続支援A型事業所の廃業数とその理由でございます。県内に所在するA型事業所につきましては、令和6年度以降に3事業所の廃止があったところでございます。廃止の主な理由といたしましては、令和6年度の障害報酬改定により事業所の生産活動に対する評価が見直されたこ とから、報酬が減額となったことなどにより、経営が圧迫されたものと承知してございます。

【質問 中沢】

滋賀の障害者手帳保持者数は増加傾向で、令和6年度末の18歳以上65歳未満は45,031人(85262人)、障害福祉サービス利用者数は、就労移行支援は341人、A型事業所は1069人、B型作業所は4450人、合計5860人です。滋賀労働局の令和6年12月23日の発表では、滋賀県内に本社のある民間企業に雇用されている障がい者は前年より約370人増加し、約4090人超となっています。働く場所が足りている状況ではなく、マッチングのためには更に多様な働く場が必要と考えます。地域偏在も気になるところです。就労系の障がい者福祉サービスの状況など、現状の分析と、今後の対応について健康医療福祉部長に伺います。

【答弁 健康医療福祉部長】

2点目の就労系の障害福祉サービスにおける現状の分析と、今後の対応についてでございますが、就労系の障害福祉サービスにつきましては、滋賀県障害者プラン2021におきまして令和8年度に必要と見込む定員数の確保に向け着実に増加はしつつございますが、福祉圏域ごとにみた場合、進捗状況にばらつきがあると承知してございます。また、昨今の物価上昇や報酬改定により、既存事業者の経営環境が厳しい状況にあることや、新規参入が難しい環境にあることなどが課題と考えてございます。このため、物価上昇局面に合わせた障害福祉サービス 等報酬の改定を国へ要望するとともに、今年度から新たに経営に関する専門家派遣事業を実施し、A型事業所等の経営安定化を支援することとしてございます。併せまして、来年度の障害者プランの見直しの中で、改めて市町を通じ、圏域ごとのニーズ等を把握し、必要な対応を検討してまいりたいと考えてございます。

【質問 中沢】

(令和)6年度以降で3件(廃止が)あったという話であるが、3件だけとは思えない。ほかにも今年度廃止するということを耳にしている。自分で働いて自立するということはA型事業所は非常に大切な場であると思っており、B型作業所と一般就労の間にあるのはA型作業所であると思っている。A型事業所であれば自立して生活することができるが、 なくなって一般就労できればそれはそれでいいことであると思うが、それが廃止されたことによってB 型作業所にということはなかなかそれだと自立できるというところにはいかないと思う。なので、A型事業所、経営の方をしっかり見るという施策をやっていただいているということだが、実際もう廃止されるという話を聞いているので、これがさらに広がっていかないようにしっかり県としてできることは支えていただきたいと思うし、知事に先ほども言っ たが、国の方にもしっかりと伝えていただいて、多様な働き方ができる障害があっても多様な働き方ができて地域で暮らせるという場を是非とも広げって言っていただきたいと思っているので、再度、伺います。

【答弁 健康医療福祉部長】

お答えいたします。私も部長として危機感を持ってございまして、御紹介いただきましたようにA型事業所は一般企業での雇用が困難ですけれども、雇用契約に基づいて就労が可能な方ですので、また、最低賃金以上の給与が支払われる大変重要な制度でもございますので、働ける場所の選択肢はできるだけ多いほうが良いと考えてございますので、滋賀県といたしましても国に実態をしっかりとお伝えして制度の維持 を図りますとともに、実態をしっかり県としてもいろんな事 業所にお話しを聞きながら事業を進めたいと考えておりま す。

【質問 中沢】

障がい者の方々にとって、働き自立することはとても大切で、そのためにマッチングはとても重要です。最低賃金の上昇と社会保険適用拡大等のA型事業所等への影響への対応について、国にも要望するなど、今後の取り組みについて知事に伺います。

【答弁 知事】

最低賃金、社会保障、社会保険適用拡大の影響等について 6点賜りました。

うち私には2点、まず1点目、最低賃金の上昇等への対応についてでございますが、A型事業所等につきましては、障害報酬が令和6年4月に改定されましたが、それ以降の物価や人件費の上昇は反映されていないことや、加えて最低賃金の引き上げや社会保険適用拡大の影響についても引き続き注視していく必要があると認識しております。県といたしましては、今年度から、新たにA型事業所の経営改善を支援するための専門家派遣事業を実施するほか、物価上昇局面に対応した障害報酬の改定等について、引き続き事業所の実態を把握しつつ、あらゆる機会を通じ国に要望し てまいりたいと存じます。

【質問 中沢】

最低賃金の上昇と社会保険適用拡大は、介護の分野でも大きな影響が出ています。最低賃金が上がることによって、最低賃金の方だけを上げ資格を持っている方を上げないことはできず、他の従業員の方々の給料も上げることになります。せめて人事委員勧告の分を介護報酬で対応してもらえるような制度改正が求められると考えます。今までも一般の給料と介護関係の給料の差が課題になっていました。役員報酬を削って、従業員の給料に回されている方もおられると仄聞しています。経営が厳しくなって人を減らせば、さらに現場は厳しい状況になります。いい介護をしようとすると適切な人員は必要です。社会保険適用拡大は、従業員には補助金があるが、事業者側には補助金もないので、そのまま経営に負荷がかかることになります。最低賃金の上昇と社会保険適用拡大による影響を把握して、今後の対応が必要かと思います。介護事業所等、福祉サービスの現場に与える影響を把握し、必要な対応を国に提案すべきと考えますが、知事のお考えを伺います。

【答弁 知事】

2点目、介護事業所等、福祉現場に与える影響等につきましては、介護報酬につきましても、議員お話しいただきましたとおり、最低賃金の上昇等と介護報酬の改定は連動しておらず、介護事業の経営への影響を引き続き注視する必要があると認識しております。県といたしましても、障害報酬と同じく、物価上昇局面に対応した報酬改定の検討や、介護従事者の給与水準の更なる向上など、事業所の実態を把握しつつ、あらゆる機会を通じて国に要望してまいりたいと存じます。

【質問 中沢】

制度改正に結びつけられるよう、全国的に展開し 、国へ全国から声をあげてほしい。

【答弁 知事】

お取り上げていただいたように最低賃金はじめ、賃金が上昇する、また物価が上がっていく、さらには社会保険の適用 が拡大されていく中で、どうしても公定の報酬で決まる。そういった分野の事業所、また医療・介護そういった分野が非常に厳しい経営を強いられる。こういう状況に対して地域の課題として目を向けつつも、国としての課題なので、しっかり国に対してものを申し制度改善につなげよといった主旨だと思います。同じ考えでございます。いずれにしてもそれぞれ多様な個性、障害のある方々が地域で働き、地域で暮らしていけるような状況のためには、そういった経営の安定というのは不可欠なものでございますので、そういう観点からも国にしっかりとものを申していきたいと存じます。

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